【三碧木星&五黄土星】水に声なき 恋愛事情

   おもいなき かなしみのはじまり

 

ナミの帰宅は遅く、平均19時頃。この日はもうすこし遅い。残業は当たり前の職場だったので、なにも考える事もなく、強いて言うならば単なる慣れのせいだったろう。遅い夕食中、家電がなる。「はい・もしもし、ナミでございます。」「藤尾でございます。お帰りでしたか」「はい!」「ナミさん遅くにごめんなさいね。三碧さんが来ているのよ。ちょっと来てくれないかしら?」「はい。わかりました。すぐに参ります。」・・なんだよ こんな夜遅くに!・・

 

このような事は最近の面倒なことの一つであったのですが、師には逆らえない立場、それにしても、こんなに遅く来る方もどうかしてるよね。全くさ、疲れてんのにさ!〈ぶつぶつ ブツ苦さ>。いつも道理「お茶」を立て、深々とご挨拶を済ませ帰宅。こんなことが何回となく続いていた。今宵の月は!なんて~と想像していた時、突然、電話がなる。心持は半ば鬼のよう、声は品の有るふりをして、「もしもし、・・・どちらさまですか?・・申し訳ありません、間違いではないでしょうか・・」「・・あーぁ。はい、・・あーそれはちょっとできない事です・・」と言っているのに、食い下がってくる。・・しかたなくお茶にお付き合いだけすることにして、一件落着。

 

JĄLホテルのフロント喫茶でコーヒーと軽食(タコの唐揚げがおいしかった)。「今日、お願いしたのはこれを差し上げたくて・・」と言って、広げたのは「茶碗」数体でした。もらう理由もないと言ったものの、そうですかと引き下がりそうにない!相手の方の押しが強い。「茶碗が目的ではないだろ」ナミは直感でそう感じた。しかし、もらってしまった。これだけではない、完全にナミの失態、「・・自動言語・・」をしゃべってしまったことだ。なんという、どうしようもない!

 

その後市内でも一応名所と言われる場所へ行く羽目になってしまい、あがなうすべもないまま。誘拐されてしまったのだ。寄せては引く波の音も、海猫の声も、風さえも。

 

・・「渡(わたり)さん。今後わたしとお付き合いしてくれませんか!」「エッ・・私はシングルマザーで 子どもも二人います。それにあなたはご家族がいる方。それはできません」と言ったその時、ナミは唇を感じた。いきなりなのに、口内にまで侵入、あきれたなんてなんのその。やられた。「あなたの、かなさまは何と言っていますか」「・・自動言語・・」「そうでしょう!」と言って抱きしめられて!!。なんてこと 

どうかしている!在らぬことだ、いかんいかんせ!

 

不覚であった。しかしナミは感じた・・仕事一筋でシングルマザーの役割を果たすべき日々を送っていた。青天の霹靂。

 

誘われたのはナミであったが、実は「夢のなかで」思いを寄せる人と切ない夜を過ごすことが、何日も続いていた。破綻を迎えて5、6年経ったころ、抑圧され続けてきた、情念が引き寄せたとしても、弁解の仕様がないと思うと胸が急に痛い、たまらなく痛い。三碧は巧みで功名な手口をもつ。男女関係に疎いナミは、弱い柔らかな土に自らハマってしまった。海辺では「芒」も探せない。

 

こんな良い月は一人で見て寝る。

 

つづきます。