【一白水星&五黄土星】の恋愛事情

   トンネルがみえる前

霜よけのわらでねんごろに囲われている牡丹のことを、「お厨子」のようだという人もいる。

冬咲きの牡丹には、よくわらの囲いがある。花木の都合を聞いてやらないと、息ながくそだたない。1月の雪は人の手を冷たくする。指先は、痛いと言う。

叔母が子宮外妊娠のため、入院している。日々回復へと向かっていると聞いた、家族もホッとしたことだろう。典子は付き添いとして病院に泊まり込み、職場との往復をしていた。3歳違いの叔母は、既に結婚し姑達に奉公していた。実は叔母には好きなお人がいたが、一族の反対に折れてしまったという話を後に聞いた。成人式も終えない可愛い盛り、赤いコートを着て雪ふる風景に溶け込んでいた、そんな叔母だった。典子は一人娘だったので、姉妹のように育ってきたこともあり、叔母の心細い心境を感じていたのだろう。

 

   雪の夜

典子にはいとこに紹介されて、付き合うことになってしまった「一白」がいた。一白は高校3年生、この時期には進学を決めた同級生たちが、血眼になって自分と戦う毎日を送っていた。従妹も冬の寒風を感じながら背を丸めていた。

例外の人が一人いた。一白である。シンシンとしばれる夜。月の光は凍りかけている道を照らしていた。夜も深くなるほんの少し前、そうおおきくもない二つの影が歩いていた。よくよく見ると、手袋は片方だけ。只、歩いていた。

 

   初めての事件

一白の大学受験が山を越えようとしていた。典子は特に気に留める事もなく仕事をしていた。此のころには叔母も退院をして自宅での静養し穏やかな日を送っていた。

合格発表の日、喜びに泣いてしまう子、落ちた現実に肩を落とす子、なんであれ次のスッテプに一歩踏み出さなければならない瞬間であっただろう。只、一白は違っていた。典子のアパートにやってきて、押し込み泥棒のごとく、典子をレイプしたのであった。

典子はなにが起きてしまったのか、頭 真っ白のまま、漆黒の闇に突き飛ばされていた。どこから聞こえたのであろうか、「わたしは、もうすぐ死ぬんだな。もし生きていたとしても、この地獄から脱することは無いだろう」。このメッセージは、典子の深海に存在するだろう光の届かぬ、牢屋に繋がれてしまった。

 

   運命の結婚

20歳を既に過ぎていた典子であったが、男女の付き合い、性交の理由、赤ん坊ができる、出産にいたる等々、成長の一斉を知らずにその日まで生きていた。呪いのようなトラウマは無知な心を飲み込んでしまったという、どうしようもない現実だけが居座った。月日が過ぎ、一白と五黄である典子は、結婚をした。 サボテンの家で新婚生活が始まった。1ヶ月にもならないある夜のこと、典子は、いびきのスゴーイ、一白の傍を離れ、襖超えの部屋で眠っていた。声を掛けられ、眠りからむりやり、引き戻されてと感じた次の瞬間、一撃をくらった。

 

   破綻の深夜

一白の心は「園長となにかあるだろう?」の言葉。その後も一撃は終わることはなかった。典子の秘密が動き始めた。「お金」を隠し持つことにした。これだけではない、典子は「覚悟を決め、腹をくくった」のです。子どもがほしい気持ちが強くなっていたこともあり、積極的に一白の体に近づいた。

 

   長女誕生

ようやく授かった女の子は、典子の命の支えであり、生きがいであり、一白との生活を続ける理由でもあった。周りからは「しあわせそうね」と声をかけられることもあるほど、仮面をしたを、誰にも悟られないように、普通に一日一日を送っていた。この間、友達と一緒にボランティア活動や内職もやっていた。三度の食事や酒のつまみ、一白のお弁当を必ず持たせるという、極ごく普通の生活だった。(このころ、典子には口にはしていない計画があった。・・とにかくもう一人子どもを産もうと)。

 

   二女誕生

4年後に色白の小さな女の子を授けてもらった。ただ体が弱く、肺炎になって入退院を繰り返していた。長女が寂しい思いを我慢していたこと、生涯忘れはしない、そして感謝している。この間平穏だったわけではなかった。仕事帰りや職場での飲み会などで、「飲んで帰宅」したときは、無理難題を押し付けられ、思うようにならない時は、一撃どころではない、典子は一歩も外に出れない時もあるほど。足で蹴られた後遺症は、数十年たった今も苦の一つである。

 

   五黄の忍耐

二女が生まれた後は仕事を退職していたので、一白も穏やかでいるだろうと希望もないわけではなかった。子ども達には天塩にかけてというくらい、手をかけていた。しかし、それでは済まされない一白の、「退行」が激しくなっていたことに、全く気づかない、五黄のひとりよがり、自己中、夫への妻としての気くばり、優しさ、エロスの弓矢のことなど、これっぽちもなかった事が機っ掛けとなり、一白は過去の行為を上回る暴力を放してきた。

乳のみ児であった二女と長女を連れて丑の刻を過ぎたころ、親戚のお宅に逃げ延びた。翌日、親戚の方のご厚意を頂き、東北の実家まで車で送って頂いた。

典子の父は「念書」を書くよう迫ったが、一白は途中で拒否した。(これは後々、裁判離婚をするにまで至った証拠ひとつとなったが)。

 

   破綻

「十年たつと道が開かれる」との格言にすがるように辛抱もしてきたが、新築の家を持ち、一白の両親とも同居し、心機一転して暮らせるようにと、日々「願かけ」していた。現実とは例えようもないほど、残酷で悲痛な試練を授けたのである。一白の母は、「男の扱いを知らないようだから、夜の商売でもやったら」と一寸釘を刺してきた。一白の父は新しい生活に慣れず、心が傷ついていた。子ども達も悲惨だった。上の子は不登校傾向、下は自分のうんちを手でこね回す、等異常行動が見られた。「これ以上我慢してもダメだ」。典子自身の覚悟を見定める必然性がある現実を叩きつけられた。

 

詳細な計画を練り、過敏で直観力のある長女に悟られない様に行動するのが、鍵となる事を知っていた。小学校生活が続けられるに少しでも安心できるところ、当分の間生活ができる資金、捨て去るもの、怪しまれない様に残すもの。念には念を入れて。もう一つ、いざと言うときの「弁護士探しをしておくこと」。そして、決行。

 

決着がつくまで、約1年6ヵ月(家裁でを通り、裁判にまで行くしかなかったから)程月日は流れた。・・・親権と養育権は典子が、戸籍は父親に、養育費も併せて。そして子と父親との交流に努める。この判決が出た頃、典子は正規の仕事に就いていた、住まいも100%確保されていた現実が有利に働き、終止符をうった。

 

   気づき

しばらくして典子は五黄の星のエネルギーは一白を食いちぎる程だったことに、「ハット!」したこと。今でも祈ることは「一白さんのしあわせです」。子ども達は、それぞれの道を生きているが、円満距離を置いての交流を続けている。この事実は子らの運勢、典子自身の人生を肯定的に舵取りしていることを伝えます。

 

一白水星と五黄土星カップルは典子のようになるとは断言しませんが、もう一つ言えることは「友は類を呼ぶ」ことです。「ご縁」(カルマ)は、肯定エネルギーとして働くわけではないということです。互いが気づき、少しでも言葉にして、胸のうちを語れる二人であるなら、「運勢」は必ず変化していくと考えます。

 

寒露」露が冷たく感じられくるころのこと。空気が澄み夜空にさえざえと🌙が明るむころです。

   若ノ浦に潮満ち来れば 潟をなみ 芦辺をさして鶴鳴き渡る  山部赤人

奈良時代歌人。「万葉集」「三十六歌仙」の一人。

 

  秋の夜に小犬のワルツ 弾みけり  文書けば夕べとなりし 秋の雨 オレは魔女

 

つづきます。