【三碧木星&五黄土星】水に声なき 恋愛事情

   一刀

 

夜も更け日付も変わるころ、電話がなる。・・こんなに遅く誰だい・・「今すぐ来てください」・・えっ!夜も遅いので明日にでも・・「人が死ぬか生きるかの瀬戸際に  とにかく今すぐ来てくださいよ」・・は ぃ・・ナミは直感的に飲んでいるんだなと。行くしかないと正直に思い至った。

 

いきなり上半身を裸にされた。そして、ナミのブラジャーに、日本刀をなんども突き。「俺がこんなに悩んでいるのに、あなたは冷たき過ぎる・・」ナミは言葉ひとつ浮かんでこない。怖いという感情すらなかった。只、前の記憶だけが鮮明に強く激しく、何度も通り過ぎた、それだけであった。どのくらいその場に止まっていたのか?ミクロ単位の、離人的なナミの肉体が在るのみである。

 

どのように帰宅したのか、漆黒の中をただ通って自宅に帰り、ただ眠っただろう。服は身に着けていたのだろうか、この世のできごとなのか あの世でのことだったのか?

 

    黙

 

ナミは次の日もその次の日も、なにごとも無かったように子どもたちと向き合っていた。自宅でも同じ、なにごともない日常を送っていた。

三碧も五黄も一途な傾向がある。ただ、五黄に対して「支配的」になるとこの「身」は消えて風の中に潜んでしまう。息を殺して、果ての果てに存在自体を始めからなかったかのように押し込む。三碧は雷そのもののように、感情をあらわにし 時にはストーカーのようになり酒乱と化し、強引な指示命令を出す。「オレの女だ」と錯覚していたとしても、若芽が狂うように繁る。爽やかで生まれたばかりの春である。大空に湧くような水が地に落ち、なんとなくまともに見られないこころ、誰にも止められない。

 

そういう星の意を持ち合わせていることを、ナミは感じていた。命がけの地獄を味わってきたはずなのにどうしてと思い出す。「一途な」関係と言うものは互いの燃えつく火のように強烈に抱きあう。なにも考えられない、その人しかない、時間も他の存在も消してしまう、あーあ眼をつむれば、熱い涙が肌のか細い隙間を透けていく。

 

   秋

 

心が高ぶり、三碧さんが花の傍に寄りて「咲け、花よひらけよ」と言えばそのようになると思っていたのかも知れないが、ナミはとうとう「離人症はとてもつらい」と、善人ではないが十字架はあまりにも重いというような「手紙」をおくった頃、三碧さんはお努めを終えて師のいる京都へ帰る事となった。

 

   白い 雲

 

秋のいちじるさは 空の碧をつきぬけて 横にながれ流れた白い雲だ なにを語っているのかそれすらナミにはわからないが、りりとかなしい静かな雲だ。

 

むかしそのむかし、天子さまがおわした、赤い松の幹は、感傷・・・。

 

つづきます。